「憧れ」を乗り越える男たち
残念ながら惜しい試合ではなかった。前回王者のパウリンカは中盤からどんどんサービスゲームをキープして、錦織を圧倒した。
会場ははっきり言って日本人ファンの方が多かったと思う。それを追い風に変えられなかった感じ。
そういう点で彼は『お祭り好き』でばないのかも。
そのあと、また『世界短水路選手権』で瀬戸大也が世界新を出しそうなレースを二つ堪能した。かなり濃ゆいテレビの時間。
平井監督は、
『萩野公介は、憧れを越えようとする気持ちが足りなかった』と評した。
ライアン・ロクテ(米)は30歳でたくさん錦メダルを取っている有名なスイマー。萩野は夏に対決しているのだが、ドーハに入ってロクテの動向をやたら気にし、落ち着きがなかったそうだ。
瀬戸大也は、ライバルで世界記録保持者のチャド・レクロー(南ア)にもロクテにも、萩野にも、まったく臆する様子がなかった。
まさに『勝てない相手はない』感じだった。
聞けば、錦織くんは、ランキング5位がわずらわしい的な発言をしたらしい。
妥当なのは12位あたりとかって(笑)
その辺の「ユルイ」感じが錦織の人気ある所以なんだが、
「ランキング5位」でいる事に慣れなければ、さらに上位に行くことは出来ないのだ。
競泳の世界では、現在二人の日本人選手が「世界記録保持者」である。
200M平泳ぎの山口観弘(東洋大2年)と、短水路200M背泳ぎの酒井志穂(ミキハウス)だ。
ふたりとも、世界記録を出してから、なぜか代表落ちをし、低迷している。
酒井は2009年に記録をだしたが、ロンドン五輪や世界水泳の代表にはなれなかった。去年追加でようやく代表入りしたが、個人で表彰台に乗ることはなかった。メドレーリレーで復調の兆しをみせた。
山口観弘は高校生の時国体で記録を出して、平井先生の東洋大に進んだ。2013年の世界水泳の代表にはなれた。
しかし日本の男子平泳ぎのレベルは高いので、今年は北島と立石というロンドンメダリストも代表落ちし、小関、小日向、冨田が代表入りした。さらに押切と高校生の渡辺一平の躍進もすごいので、国内の選考が激戦である。
北京五輪の直前、北島康介はオーストラリアの選手と、世界記録を出したり抜かれたりを繰り返した。
平井監督によると
「世界記録を抜かれた方が気分的に楽だった」そうで、
世界記録保持者でいる事も楽ではないようである。
アスリートたるもの、誰だってランキング1位になり、金メダルをとり、世界記録を出すのが憧れだ。
その憧れが現実となった時、予想もしなかった事態が待っているようだ。
世界はまだまだ広い。